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10代のひと夏の悩みと成長 映画『のぼる小寺さん』感想

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2020年7月3日より全国で公開されている映画『のぼる小寺さん』を観にいきました。
 
 
主演は元モーニング娘。の工藤遥ちゃん!
 
正直私は原作を全く知らず、工藤遥ちゃん目当てで観にいきました。
しかし実際に鑑賞してみると、彼女の存在の有無関係なしに純粋に楽しむことのできる作品になっていたのです。
 
今回はそんな映画『のぼる小寺さん』の感想を書いていきたいと思います。
大いにネタバレが含まれていますのでご注意ください。

小寺さんは天使

小寺さんは中学の頃からボルダリングを始め、高校ではクライミング部に所属する高校一年生の女の子。
クライミング命の彼女は進路希望には「クライマー」と書いて先生を困らせてしまいます。
そんな彼女をクラスメイトたちは「不思議ちゃん」と揶揄していました。
 
クライミング命の小寺さんはとにかく一生懸命。
高い壁を登るために練習を欠かしません。
例え休み時間中でもトレーニングをしています。
 
そんな小寺さんを見た人たちが少しずつ感化されていきます。
 
周りの人から「キモい」と言われていた四条。
周りに合わせがちな田崎。
学校をサボってなんとなく周りに流されている倉田。
そして何に対してもやる気のない近藤。
 
彼らに対して小寺さんは何もしていません。
ただそこにある壁を登っているだけです。
しかしその姿を見た4人の登場人物は次第に目の前にあることに一生懸命取り組むようになります。
 
四条は小寺さんと共にクライミング部で活動します。
最初は小寺さんが入ったから……という感じでしたが、徐々にクライミングに魅了され一生懸命に取り組むようになります。
(四条は中学生のときに小寺さんに告白しふられているのです。)
ある日そんな姿を見て彼に惹かれた女の子が現れました。
そしてその女の子に告白され、晴れて付き合うようになります。
 
田崎は写真が大好きでしたが、それをあまり公にできずにいました。
彼女は小寺さんの姿をこっそり撮影……盗撮していました。
しかしある日盗撮が小寺さんにバレてしまいます。
すると小寺さんはその映像や写真が参考になるからと、クライミング部の練習の撮影をお願いします。
次第に自分の趣味である写真に自信をもったのでしょうか。
写真のコンテストに応募をします。
結果は芳しくありませんでしたが、悔しい!という気持ちを持つようになりました。
 
倉田は学校にもほとんど来ず、ちょっと悪そうな仲間と常に連んでいました。
ある日仲間と川で遊んでいた帰りに、クライミング部の活動で訪れいた小寺さんに出会います。
得意のネイルを褒められた倉田は小寺さんにもネイルを施します。
その後相変わらず学校へは来ないままでしたが、ネイルの学校に通い始めたことを告白しました。
 
近藤はとにかくやる気のない男の子。
先生に「やる気がないなら帰れ」と言われて本当に帰ってしまうような生徒でした。
高校では親に「運動部に入れ」と言われたから、一番楽そうな卓球部に入部します。
最初は全くやる気がなく適当な練習をしていましたが、小寺さんに感化されるうちに一生懸命取り組むようになります。
その結果初めての大会でベスト8に入るほどの実力となりました。
 
このように小寺さんは関わった人々に少しずつ良い影響を与えていきます。
そのみんながとても生き生きとしていました。
だけど小寺さんは本当に何もしていません。
ただいるだけで幸せを与える小寺さんはまるで天使みたい。
 

シュワっと甘酸っぱい

小寺さんに惹かれていく近藤。
しかし四条からは「小寺さんを理解していない」と言われてしまいます。
その後近藤は卓球部の活動に一生懸命取り組むようになりました。
 
そんな近藤を小寺さんも少なからず意識していたのでしょう。
 
ある夏の日、近藤は小寺さんにキリンレモンを差し出します。
ベンチに座って1本のキリンレモンを回し飲み。
照れて背を向ける近藤の背中に、小寺さんの背中が触れます。
この瞬間2人の気持ちは繋がったように感じました。
 
 
私はこのシーンがとても好きです。
 
まず差し出したのがキリンレモンというのが良い!
キリンレモンというと、サイダーの甘みとすっきりとしたレモンの風味が魅力的な炭酸飲料です。
まさしく「甘酸っぱい」を体現したような飲み物!
 
 
高校生の時ってなんとなく炭酸飲料を好んで飲みたくなりませんでしたか?
休み時間に小さいサイズのコカ・コーラや三ツ矢サイダーを買って飲んだ記憶、ありませんか?
だから部活の休憩中にあえて炭酸飲料をチョイスするというのが「わかるー!!!」と個人的な共感を生みました。
さらに前述したとおり、キリンレモンは甘酸っぱい恋の味。
告白するのか!しないのか!というこのシーンにおいて、なんて完璧なチョイスなのでしょうか。
 
そして最後の背中合わせ。
お!近藤がついに告白するのか!?と思いきや、彼は何も言えずに背を向けてしまいます。
近藤も小寺さんもあまり言葉の多い方ではありません。
それに2人ともどちらかというと不器用な方だと思います。
だけど一生懸命頑張ったもの同士何か通じるものがあったのでしょうか。
小寺さんが近藤にそっと背中を合わせます。
それが小寺さんなりの答えなのだと思います。
 
よくある作品ではちゃんと言葉で告白をして結ばれます。
だけど言葉のないこんな不器用な恋もいいなって、改めて感じる事ができました。
 
 
 
 

友人関係

頑張らない自分かっこいい。
斜に構えてる自分かっこいい。
 
そう思う時期ってあると思います。
 
だけど大人になってから気づくのです。
あのとき全力で頑張ってれば良かった、と。
 
最初の近藤は頑張らず適当に過ごしていました。
友達もそんな感じで、部活中も3人でやる気なく過ごしています。
 
だけど近藤は変わりました。
そんな彼と2人の間にはいつしか溝ができていきます。
文化祭の準備中、看板を作る作業を近藤に押しつけ、2人はどこかに行ってしまいます。
 
そんな彼らの姿を見てこう感じました。
かっこ悪い。
 
きっと仲間だったはずの近藤が変わっていく姿が嫌だったのだと思います。
だけど悪い方向に変わっていくならまだしも、良い方向に変わっていく姿を見て嘲笑うのはただただかっこ悪い。
 
 

青春って難しい

近藤は小寺さんやその周囲の人と仲良くなっていく一方で、元の仲間とは疎遠になってしまいます。
それが彼にとって良いことなのか悪いことなのかはわかりません。
 
卓球の大会後、ベスト8になった近藤に2人は歩み寄り軽口を叩きつつ握手を求めます。
しかし近藤がその手を取ることはありませんでした。
この時2人と近藤の間にある溝が決定的になったように感じました。
 
この瞬間きっと2人は初めて「寂しい」と感じるのでしょうね。
今までのちょっとした意地悪も、きっと仲間が離れていく寂しさ故なのだと思います。
 
10代の頃はまだ世界が狭くて、そこでうまくやっていく事が全てだと思いがちです。
だけど少し世界を広げる事で見えるものが全然変わってきます。
近藤にとってはそれが小寺さんだったのでしょう。
だから元いた世界の友人とは分かれてしまった。
 
その選択が良いか悪いかわかるのはもっとずっと先だと思います。
だけどこの決別は少なくとも残された2人に取って自分を見つめ直す機会になるはずです。
 

まとめ

 
ストーリーの軸は高校生たちの心の成長。
その一方で恋愛や友人関係など、10代の頃にありがちな悩みがギュッと詰め込まれています。
 
私が思うのは「10代の頃にこんな風に熱中できる何かが欲しかった」ということ。
確かにジャニーズにはハマっていましたが(笑)、自分の心の成長や将来のために何かを頑張る!ということはなかったように感じます。
進路もなんとなく行きやすいところを選択し、なんとなく高校生活を送っていました。
あの時もっと頑張っていたら、何か変わっていたのかな?
 
今となってはそれを取り戻すことはできません。
だからこそ大人になった今からでも、何か一つのことを頑張ってみよう!と思わされました。
小寺さんは登場人物のみならず、私にまで良い影響を分けてくれたのか……!
 
映画『のぼる小寺さん』。
青春時代を何かに捧げた方も、なんとなく過ごした方も、ぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか?