2018年に上演された演劇女子部ミュージカル『ファラオの墓 蛇王スネフェル』。
なかなか観られないままだったのですが、やっと観ることができたため今更ですが感想を書いていきたいと思います。
『ファラオの墓~蛇王・スネフェル~』とは
竹宮恵子作『ファラオの墓』は古代エジプトを舞台とした少女漫画です。
エステーリアの王子サリオキスと、ウルジナの国王スネフェル。その二人を中心とした二国の戦いをメインに家族関係、恋愛関係などが描かれています。
2017年に演劇女子部ミュージカルとして、モーニング娘'17の工藤遥、石田亜由美、小田さくら主演で上演されました。
同じ内容がキャストを入れ替えて「太陽の神殿編」と「砂漠の月編」として上演されています。
太陽の神殿編ではサリオキスを工藤、スネフェルを石田が演じ、砂漠の月編ではサリオキスを小田、スネフェルを工藤が演じています。
本作はそのバージョン違いで、スネフェル側を中心とした話となっています。
キャストの入れ替えはなく、スネフェルを石田、サリオキスを加賀楓が演じています。
前作との違い
前作はサリオキスサイド、スネフェルサイドの両方が平等に描かれていました。
そのため個人の心情については少々見えづらい部分がありました。
しかし本作は殆どがスネフェルサイドの話となっています。
よって周囲の人物の心情やその変化が非常に伝わりやすいものになりました。
また登場人物の役回りについても、前作と若干の違いがあります。
感想
個人的に感動した3人について書いていきたいと思います。
石田亜由美
本作の主役を演じた石田。
彼女の演技力は初舞台である『ステーシーズ~少女純潔歌劇~』の頃から一目いていました。
役柄自体はすでにゾンビ化していることもありたどたどしく話すのみでしたが、彼女の差すような視線を目にして「この子はきっと物凄く演技ができるはず」と予感したのを覚えています。
翌年の『ごがくゆう』ではまさにその予感が確信となりました。
以降もチェリー、サクラ姫、フォースなど主要なキャラクターを演じることとなります。
今までは主演といってもダブルキャストであることが殆ど。
しかし本作は紛れもなく彼女が主人公です。
純粋に嬉しかったですし、今後のモーニング娘。の演技の核となるのは彼女だなと改めて思わされました。(とはいえ昨年の娘。は舞台自体がなく、彼女の演技が観られる機会がなくて残念でした。)
一方できっと「工藤なしで大丈夫なのか?」という声は0ではなかったと思います。
私自身、今まで観なかった理由としてはその不安も関係しています。
しかしそんな不安は全くの無意味だったと思い知らされました。
彼女はスネフェルの抱える孤独や苦悩、そして狂気に陥っていく様を見事に演じていました。それは間違いなく前作のスネフェルを超えています。
狂気を表現するというのは簡単なものではありません。
私個人の考えではありますが、観客側として見たときにいかにも「狂気的な演技をしています」感が強い演技は、見ていて若干冷めてしまいます。
しかし本作の彼女の演技にはそのわざとらしさはあまり感じず、「こういった心身の変化があっての狂気」というのが表現できていたように感じました。
この手の演技が出来るようになったあたり、卒業後は本格的に舞台女優への道を歩んでほしいと期待が高まります。
佐藤優樹
彼女は普段のパフォーマンスでもそうですが、彼女には場の空気を全て独占してしまうような力があります。
本作でケス大臣の部下で暗殺者という役回り。
そのため演技の方向性によってはあまり印象に残らないこともあるかもしれません。
しかし彼女は劇中歌「ジクの証言」で全てを持っていきました。
あの瞬間あの場の空気は全て彼女のもの。
ただメネプ神官の屋敷で起きた出来事を淡々と述べるだけのこの曲を、彼女は怪しく怪しく怪しく歌い上げました。
役柄によっては場の空気を独占というのはNGな場合もあります。
前回演じたユタはまさにそのタイプでしたが、その際はきちんとストーリーテラーに徹していました。
また2016年上演『続・11人いる!東の地平・西の永遠』でバセスカを演じた際も、物語の核であるバセスカ像を崩すことなく演じ切りました。
このことから彼女はやっていい役、だめな役をある程度わかった上で演じているように感じます。
もちろん演出家の指示と言ってしまえばその通りかもしれません。
しかしいくら指示を受けたところで場の空気を引き付ける能力というのは皆に備わっているわけではありません。
その点に関して言えばまさに天性なのではないでしょうか。
野中美希
前回は可憐で儚げな姫ナイルキアを演じていた彼女ですが、今作では打って変わって勇ましい男性のイザイ役を演じています。
彼女の身長は160に満たない程度ですが、この劇中においては180を超える大男のように見えました。
イザイを演じるにあたってはインド映画『バーフバリ』を参考にした*1らしく、納得の勇ましさです。
しかし参考にしたからといって誰もがその通り演じられるわけではありません。
参考にしてそれを結果として出せるのはひとえに彼女の演技勘の良さがあってこそです。
余談ですが『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』においてマリーゴールド役の田村芽実さんが劇中歌「もう泣かないと決めた」を歌う姿が「本田美奈子さんを彷彿とさせる」と話題になりました。後から分かったことですが、実際にこの時演出家の末満さんから本田美奈子さんの歌う「命をあげよう」を参考にするよう言われていたそうです。
演技力についてはこれまで「12期以降の中で上位」「牧野と同等くらい」という認識でした。しかし本作によって彼女の演技力は「グループ内で上位」という認識に変わりました。
今後の舞台では間違いなく重要人物を演じることとなるかと思います。
まとめ
バージョン違いとはいえ前年と同じ作品を演じるというのは大きなプレッシャーだったはずです。
しかしそんなプレッシャーを跳ねのけるかのように高クオリティな舞台を成立させました。
毎年の舞台が楽しみだっただけに昨年も今年も舞台がないのは非常に残念です。
個人的には15期メンバーの北川莉央ちゃんの演技に期待しています。
ラジオ等で垣間見える彼女の堂々とした感じはきっと舞台でも発揮されるはずです。
また歌も上手いので舞台を通して更にスキルアップをしてほしいという願いもあります。
来年は観られるといいなあ……。
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